丸い黄鉄鉱は、北海道の石という本に収録されていました。この岩石の産地には、夕張 紅葉山と記載されていたので、さっそく紅葉山に向かったのですが、紅葉山をどう探索しても、石が転がっていそうなところがほとんどなかったのです。
その後、聞くところによると、この産地は高速道路の工事により、採取できる場所がなくなったそうです。「これは諦めるしかない…」とはならないのが、札幌地質探究部です。
本に掲載されていた岩石の姿を見て、どういう場所で採取できる可能性があるのか、それは、この岩石がどういう歴史を経てこの形になったのかをも含めて想像したのです。
紅葉山のある場所に私たちは立ちました。すると、昔かなり激しい火山活動を行ってあろうと想像できる山が、私の目に入ってきたのです。この丸い黄鉄鉱は、たぶん岩石のノジュールです。丸いまま地層に埋まっているか、もしくは、ある岩石の中に捕獲された状態で存在しているか、そのいずれかだと考えたのです。そう考えると、そんな地層が現れている場所は、ごくわずかです。
そして、私たちは発見したのです。たぶん、この地には誰も訪れてはいなかったのでしょう。丸い黄鉄鉱しっかり手にいれることができ、皆さんに紹介できることが可能となりました。基本的には、この地域で二度と丸い黄鉄鉱は発見されることはないでしょう。丸い黄鉄鉱が作られていく過程を想像する時、まさに地球の歴史そのものを感じとることができました。
光の当て加減で微妙に輝きが変化します。下の写真では、極力金属的な輝きが分かりやすい様に撮影角度を変えて撮影してみました。石の外殻部分と中央部に発達した黄鉄鉱を確認することができます。
採取地は丸いノジュールを多数発見できる地層があります。その中でも重量感の違う、いかにも金属ですよという、独特の重さを感じとることができます。一見しても他のノジュールとの違いを見分けることは容易ではありませんが、数十個のノジュールと比較しますと、黄鉄鉱が入っているノジュールは質感や微妙な色、重さなどが他のノジュールとの違いを見せています。
左右二つの標本は半分にカットしたものですが、カット面は上下逆で撮影されています。左の標本はカットしたままの様子です。右の標本は研磨したものです。
研磨すると、見事な鏡面が表れました。鏡面化した面の色の違いは、光の条件の違いによるものです。
標本の中央部分にわずかな黄鉄鉱がみられる。丸いノジュールの中心には、核になる硬い物質が必要ですが、化石なども見受けられることも多い。
この岩石は中央部に楕円形の岩石を捕獲しています。捕獲岩の先端部には丸く黄鉄鉱が発達しています。
やや大きめのノジュール。ノジュール内部の外周近くに黄鉄鉱の発達が確認できます。この標本は磨いていないので、まだ反射の光がありませんが、磨くと金属光沢が生まれてきます。
標本の中央部に捕獲された卵型の岩石の内部に、所々に黄鉄鉱を確認することができます。
外側の泥岩よりやや黒めの泥岩ノジュールが捕獲されており、崩れた先端部に丸く8mmほどの黄鉄鉱が丸く露出している標本です。
拡大すると上の写真で確認できるような丸い部分は消え、辺り一面の黄鉄鉱の発達が確認できる標本です。
標本中央部よりまん丸のノジュールが飛び出した痕跡の残る面白い標本です。
裏側