《石の散歩道・札幌の石の散歩》

(札幌の名前がついた石といえば、札幌軟石が有名です)

 札幌軟石といっても、北海道以外に住まわれる方は、知らない人が多いのではないでしょうか。小樽運河に並ぶ倉庫群といえばどうでしょうか。そうです、小樽運河沿いの倉庫に使われていた岩石が、札幌軟石という石なのです。残念ながら札幌軟石は建築材料としては、改築や改修工事には適さず小樽宇賀沿いの倉庫でも、札幌軟石を使用した倉庫は減っていっています。

 

 また、札幌在住の人であれば、「玉ねぎ畑の倉庫」が、より強いイメージが出来るでしょうか。昔は、北海道の多くの都市のビルには札幌軟石が使われていました。今はその建築材料として使用するには、加工が限定される面や、使用のの難しさ、建築強度の問題などで建築建材としてあまり使われることがなくなったようです。

 今残る数少ない札幌軟石の建築構造物は、古き良き時代をしのばせるものになっているのでしょうか。

 

 昔、札幌軟石は農家の倉庫に使われる事が多かったのです。私は子供の頃、りんごや梨がたくさん入った倉庫の持ち主に聞いたことがあるのですが、「なぜ倉庫にこの石を使うのですか?」と尋ねたことを今も新鮮に覚えています。その答えは意外なものでした。「札幌軟石を使った倉庫内の室温は、夏冬通して変化しにくいのだよ。だいたい、平均温度12~15度」と教わったのです。

 

 では、札幌を代表する「札幌軟石」とは、どのような石なのでしょうか。少し調べてみました。札幌軟石は凝灰岩です。この凝灰岩は支笏湖の形成時の火山活動により出来たものです。支笏湖はカルデラ湖ですが、今から5万数千年前頃から始まった火山活動で徐々に地形が変わっていったようです。

 その後のこの地の大噴火を経て、火砕流が現在の札幌市内の南区まで流れ込み、札幌市の南側にある凝灰岩の岩石層を作ったようです。札幌軟石はとても柔らかく、のこぎりでも切れる硬さです。

 支笏湖は、札幌の中心より南方向に約45キロ離れております。その火砕流が札幌市内まで流れたなどとは、現代人には信じがたい事です。

 支笏湖は札幌市民にも愛され、ドライブで訪れるエリアですが、車で1時間ほどかかります。北海道で1時間ですから、それほど近い距離ではありません。今もこの支笏湖周辺の山は、水蒸気を上げている活火山です。支笏湖には軽石と呼ばれる火山活動の噴火で生まれた岩石があります。スコリアとも呼ばれるようです。

 

 

Aroma stone   かおるいえ (軟石やさんから購入しました)                                                             35×50×55㎜

軟石って?…北海道開拓時代。日本の木造建築では、寒い北海道で火災が発生した際に街が焼失してしまうことが多く、当時アドバイスに来ていた外国人技師が自分たちの国のように、火に強い石での建築を薦め、多くの軟石が使われました。建築基準法が変わり、現在は当時と同じ方法で建てることができず、現存する建物は北海道の歴史を伝える大切な宝です。(軟石やさんのパンフレットより)

札幌軟石の原石を途中まで削ってあります                   100×170×60㎜

この標本は、辻石材工業(株)様から提供していただきました。

 

のこぎりでカットすることが出来るそうです。

札幌軟石の標本です       60×100×10㎜

この標本は、辻石材工業(株)様から提供していただきました。

 

岩石の柔らかさや、多孔質の様子が確認できます。この多孔質の空気の層が建材として温度変化がしにくい材料として使われてきたのですね。今では、この多孔質の特徴を生かした発砲コンクリートと呼ばれる優れた建材がありますね。

 

《札幌の石、札幌軟石は約4万年前の火山活動で生まれた岩石です》

 札幌軟石は、4万年の日々を経て生まれた北海道の太古の岩石ですね。その時の長さを考える時、その札幌軟石の重みは4万年の重みでしょうか。皆さんのお住まいの地にも、地元の地名がついた岩石はありませんか? その歴史を少し調べてみるのも面白そうです。札幌の石、札幌軟石のお話でした。

《札幌市南区 石山緑地(札幌軟石採取地跡)》

 札幌軟石の採取地は、今は石山緑地という公園に変わっております。